金融不安と景気減速で不動産不況が深刻です。この状況を解消しようと、住宅ローン減税など政府による景気刺激策が実施されています。また、日銀の低金利政策によって短期金利が低下し、魅力的な低金利住宅ローンも登場しています。
優遇金利などで巧みに変動金利型住宅ローンを勧誘する金融機関の戦略にリスクはないのか検証します。
金利低下で変動金利ローン利用が増加

世界的な金融不安で政策金利が低下しています。これに伴い住宅ローン金利も低下傾向となっています。長期国債金利などに連動する長期固定金利は2008年夏に一旦上昇しましたが、その後の景気低迷で長期金利も低下し、2008年初めと同程度になっています。一方、短期金利に連動する変動金利型住宅ローンは、日銀が政策金利を引き下げた影響で2.5%程度に下がっています。
(参照:ローン金利は何で決まる)
住宅ローンを利用される方は店頭金利そのままよりも優遇金利を利用される方がほとんどです。優遇金利でも変動金利タイプの金利低下が進んでいます。
優遇金利の種類
- 当初優遇型
- 当初優遇型とは、当初の固定期間だけ優遇金利を適用する住宅ローン、
優遇期間が終了するとかなり金利が上がる場合があります。 - 全期間優遇型
- 全期間金利を優遇するのが全期間優遇型です、
優遇幅は当初優遇型よりも低くなります。
変動金利型住宅ローンの金利低下を受け、民間住宅ローンの利用者は変動金利型住宅ローンを選ぶ人が増えています。金融機関が変動金利型住宅ローンに利用者を誘導していることが原因です。さらに住宅金融支援機構が行っている民間ローン調査によると、住宅ローン利用者は、今後の住宅ローン金利の見通しを「しばらく金利は高くならない」と見てる人が増えています。こんな住宅ローン利用者の意識変化も変動型住宅ローン利用者が増加している理由です。
金利が上昇すると未払利息のリスク
現在の低金利状態が長く続けば、変動金利型住宅ローンが有利なのは間違いありません。しかし、「下がったものはいつかは上がるもの」景気が回復し短期金利が上昇すると、変動金利型住宅ローン利用者はどうなるのでしょう。いくつかの金利変動をシュミレーションしてみました。
(参照:金利動向で有利なタイプは変わる)
低金利が返済終了まで続いた場合
現在の低金利状態が住宅ローン返済が完了するまで続いた場合です。
当然、金利の低い変動金利型住宅ローンが有利です。
たとえば、借入額3,000万円、返済期間35年で変動金利タイプと固定金利タイプを比較すると
★変動金利 金利1.475% 35年 総返済額3,842万円
★フラット35 金利3.2% 35年 総返済額4,990万円
ただし、現実問題として35年間現在の超低金利状態が続くことは考えにくいです。
短期金利が固定金利を上回った場合
ある程度金利が上昇することを想定します。短期金利が上昇し6年目に金利が3.5%に上昇し、その後3.5%金利を維持した場合をシュミレーションします。
★変動金利 当初5年 金利1.475%
6年目以降 金利3.5% 総返済額4,868万円
★フラット35 金利3.2% 35年 総返済額4,990万円
シュミレーションによると、これだけ金利が上昇しても、まだ変動金利型住宅ローンの方が総返済額は少なくなります。当初5年間の低金利により元本が早く減ることによるメリットが大きいのです。
金利が急上昇した場合
今後金利が上昇し毎年0.5%づつ10年間上昇し続け、その後返済終了まで金利が維持することを想定します。
★変動金利 当初 金利1.475%
6年目 金利3.975%
11年目 金利6.475% 総返済額7,330万円
★フラット35 金利3.2% 35年 総返済額4,990万円
金利が急上昇した場合変動金利が問題なのは、毎月の返済額よりも利息の方が増えてしまう「未払利息」が発生するリスクがあることです。
未払利息とは、金利上昇で返済額に占める利息部分が多くなり、ついには返済額に占める元金部分が無くなり、さらに毎月の返済額よりも利息の方が多くなる状態です。
日本でも80年代のバブル期に「未払利息」が発生し社会問題となりました。現在のような低金利時代の後は、金利が上昇しやすくなります。雪だるまのように利息部分が膨れあがらないように注意しましょう。
固定金利を組み合わせるか短期返済か
変動金利型住宅ローンは低金利が魅力ですが、将来の金利上昇というリスクがあります。リスクを取りたくないならフラット35などの固定金利ローンを利用されるのが安心ですが、変動金利型ローンの低金利を活用出来ないのはもったいないですね。
そこで、次の二つの方法を提案します。
金利上昇リスクへの備え
- 変動金利型と固定金利型を組み合わせる
- 変動金利型住宅ローンと固定金利型住宅ローンを組み合わせた(ミックスローン)を利用します。ミックスローンは、変動金利型と固定金利型の中間の特徴があります。
金利上昇時は、変動金利型よりは返済額の増加を抑えられますが、固定金利型よりは多くなります。
低金利が続くと、固定金利型よりは当初の返済額を軽減出来ますが、変動金利型よりは総返済額は多くなります。 - 返済期間を短くする
- 金利上昇に伴う未払利息を防ぐのに、返済期間を短くする方法があります。返済期間が短くなると、毎月の返済額は多くなりますが、返済額に占める元金部分が多くなり、元金が早く減っていきます。
金利上昇のスピードによりますが、返済期間を10年~20年程度に短くすると未払利息は発生しにくくなります。